ベシャメルソース(ホワイトソース)のコツ

 グラタンやクリームコロッケづくりに欠かせないベシャメルソース(ホワイトソース)。
 でも、料理本などを片手に初めて作る人は、たいてい「うまくいかないなぁ…」と感じる人が多いのではないでしょうか。

 誤解を承知で、初めて作る人が、まず意識すること。
 それは、「ベシャメルソース自体は美味しくない」ということです!

 料理本通りに作ったのに、全然味がしない…。美味しくない…。

 それで「失敗かな?」と思ってしまう人が多いようですが、実は、美味しくなくて当たり前なのです。

 そもそも、基本的な材料が、バターと小麦粉と牛乳、塩コショウです。
 冷静に考えて、小麦粉の風味の塩コショウした牛乳ですよ??
 
それだけ食べて美味しいはずがありません。

 ベシャメルソースは、あくまでソースのベースであり、そこに出汁や具が混ざって、はじめて美味しくなるのです。
 大昔は、フォンやタマネギなどの野菜や、色々な香辛料を加えて作っていましたが、現代の作り方では、ほとんど何も入れない、プレーンな状態のソースです。

 …と、前置きはここまでにして、作る時のポイントを説明します。

 まず、ルーの作り方。
 「ルー」とは、バターと小麦粉を合わせて炒ったもので、ソースやスープ類をリエする(とろみをつける)ための古典的な手法です。

 「バターと小麦粉をうまく混ぜ合わせられない」、という人は、ヘラやしゃもじではなく、ホイッパーで混ぜるとやりやすいです。
 鍋にバターと小麦粉を入れて火にかけ、バターが溶け始めたら、ホイッパーで小麦粉と混ぜ合わせながら火を入れていきましょう。

 バターと小麦粉を炒めると、一度ボソボソになり、それを根気よく練り続けるとまた滑らかになるのですが、ヘラだとやりにくいので、そこで失敗した気になり、挫折しがちです。
 それが、ホイッパーだと、簡単になめらかなルーが出来上がります。

 仕込む量が少ないと、ポソポソにひっついて、うまく混ざらないかも知れません。
 その場合は、ヘラですり潰すようにしながら延ばして、火を入れていきます。

 ベシャメルソースの基本的な分量は、バター:小麦粉=1:1、それを適量の牛乳で伸ばします。

 このバターと小麦粉の計量をいい加減にやって、小麦粉が多すぎると、ベタベタのソースになってしまいます。
 牛乳の量の基本は、ルーの十倍くらいが標準です。(バター30g+小麦粉30g=60gなら、牛乳600g)

 それを基準に、グラタンなら標準通りか緩め(牛乳多め)、クリームコロッケ用なら固め(牛乳少な目)に調整しましょう。

 ルーを作る時のポイントは、弱火でしっかり小麦粉に火を入れることです。
 これが浅いと、粉っぽい味になったり、後でダマになりやすいです。

 といって、やりすぎると焦げます。
 では、そのしっかり火を入れるタイミングってどこなの?
 となると、かすかに色が濃くなった(焦げ始めた)瞬間が、間違いのないタイミングです。
 その瞬間に、冷たい牛乳をパッと入れます。

 そもそも、ルーの火入れ具合は料理によって変えるもので、例えばドミグラスソースの場合は、茶色くなって、香ばしい香りが出るまでルーに火入れをします。
 ベシャメルソースでそこまで焦がすと、色がついて見栄えが良くないし、その香ばしさが料理の風味の邪魔になることもあるので、かすかに色がついたくらいが、しっかり火は入っているけど、焦げ色・香りが立たないギリギリのタイミング、ということです。

 牛乳を入れたら、混ぜ合わせながらじっくり火を入れること!
 ここが大事です。

 牛乳と一緒に加熱することで、全体をよく乳化させ、小麦粉のでんぷんをアルファ化(糊化)させることが大事です。

 牛乳は、冷たい牛乳を使います。
 もしくは、冷ましたルーに、温かい牛乳を加えます。
 この温度差が重要です。

 熱いルーに温めた牛乳を入れると、ダマになります。
 逆に、冷たいルーに冷たい牛乳を入れても溶けず、そこから加熱してもダマになります。

 牛乳は、最初は少しずつ加えましょう。そして、ルーをしっかり溶かし、混ぜ合わせます。

 ここで重要なのが、先ほども書いたように、牛乳を入れてからもしっかり火を入れることと、丁寧に混ぜることです。
 
牛乳にルーが溶けただけでは不十分です。見た目は出来上がってるように見えても、実際には成分がまだ完全に乳化しきっておらず、小麦粉もアルファ化していません。
 でんぷんのアルファ化には水分が必要なので、ルー作りでいくら加熱していても、でんぷんはまだアルファ化していません。
 
牛乳を入れてから、じっくりかき混ぜながら加熱して全体をよく乳化させ、小麦粉をアルファ化させましょう。

 この、小麦粉のアルファ化が不十分なままグラタンなどにしてしまうと、オーブンに入れてから小麦粉だけが固まり、糊状のボテボテした部分ができてしまうのです。
 糊のようなソースになってしまう、という人は、このアルファ化が不十分か、小麦粉の分量が多過ぎるからでしょう。

 とろみのつき具合がよくわからなければ、はじめは、やや固めに作ると良いでしょう。後から牛乳を足して緩めるのは簡単なので。

 また、混ぜを雑にすると、ルーが大きな塊のまま残ってしまい、牛乳に十分なとろみがつなかかったり、鍋底で牛乳が焦げたりします。
 だから、面倒だけどじっくり丁寧に、火にかけながら混ぜる。
 ここが状態の良いベシャメルづくりのポイントです。

 それでも「ダマができる」のは、多少は仕方がありません。
 プロが作ってもダマはできます。

 なので、そこに「濾す」という作業を必ず行います。
 大昔は布に包んで二人がかりで絞ったりしたようですが、現代はそこまでしません。
 シノワがあると便利なので、お金がある人は是非買って下さい。
 ない場合は、家庭ならザルでもそれなりにいけます。

↓あると便利なシノワ
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 ポイントは、十分に加熱して小麦粉をアルファ化させた後に濾すことです。
 火を入れるとダマになるからと、ちゃんと加熱しないままに濾しても意味がありません。

 味付けの塩コショウは軽くで良いでしょう。

 そうして出来上がったベシャメルソースを味見すると…美味しくないはずです(笑)。
 初めに言った通り、そういうものなのです。
 
しょせん小麦粉風味の牛乳ですから、当然です。

 そこで、味気ないからと塩を入れ過ぎたりすると、しょっぱくて使い物にならなくなってしまいます。

 なめらかなソースになっていれば、成功です。

 味については、ベシャメルソースだけで美味しくしようとせず、あくまで、料理に展開する時に、出汁や具と総合して、味付を考えましょう。

 


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