残念映画「ロサンゼルスの決戦」
 

 駄作映画は山ほどあります。
 ただの駄作は批評するまでもありませんが、もう少し上手く作れば名作になり得たろうに、もったいないと感じる「残念映画」の解説です。

 「ロサンゼルスの決戦」は、2011年のアメリカのSFアクション映画です。
 突然宇宙から侵略してきた宇宙人に、地上の兵器で戦う軍隊を描いた作品。

 ハイテクノロジーな宇宙人相手に、現代の装備で真っ向勝負する映画って、ありそうで意外とない設定だけに、途中まではなかなか面白かったのですが……

(以下、ネタばれあり)

 残念な部分を解説していきます。

1.侵略目的と戦略が一致しない

 最大の失敗はここでしょう。
 この映画では、宇宙人の目的は地球の水資源らしい。
 なので地球人には全く興味がなく、一方的に殺戮をしていくという話しになっているのですが……

 いや、それなら宇宙から主要都市を攻撃して、地球人の大半を壊滅させてから上陸するでしょ。
 わざわざ地上に降りてゲリラ戦を仕掛ける意味が分かりません(笑)

 ネットの評を見ていると「宇宙間移動するような科学レベルなのに兵器がしょぼい」という突っ込みや、「地上戦より先に制空権からおさえるでしょ」がいうのが多いですが、宇宙戦争レベルなら「空」とえば「宇宙」。そもそも宇宙からミサイルくらい撃って、地球上に姿すら見せないと思います。

 もっとも、それを言ってしまうと宇宙からの侵略映画が作れなくなってしまうので、「地球人に興味がない」という設定がやっぱり失敗だと思います。

 ベタではあるけど、地球人を捕らえにきたとか、母星を失い、地球社会に入り込んで、破壊を最小限にして征服を狙う、みたいにしないと、動機と行動に矛盾が生じてしまいます。

2.軍隊の兵器がしょぼい

 これも、ネットで多く突っ込まれてるポイントです。
 明らかにテクノロジーが上だと思われる未知の敵に対して、なんで兵器があんなしょぼいマシンガン(笑)
 2011年なら、もっと破壊力のある重火器あるでしょう。

 そもそも、警察署への救助作戦を開始した時点では、「敵に航空兵器」はない、という判断でした。
 その判断自体が甘すぎておかしいのですが、もしそう思っていたのなら、なぜ歩兵で奪還計画を立てた??
 ヘリで地上攻撃しながら直接警察署前まで飛んで救助したほうが確実だし早い。
 「3時間後に空爆」とか呑気なこと言ってないで、戦闘ヘリをばんばん飛ばして地上攻撃しまくったら、敵の地上兵力なんてあっという間に駆逐できでしょう。

3.宇宙人の強さが謎

 序盤では、マシンガンをガンガンに当ててもなかなか倒せず、「なぜ死なないんだ」と言ってました。
 だからわざわざ戦地で、倒れた宇宙人の解剖をしてまでして弱点を知ろうとしたのに、映画後半ではマシンガンを乱射してるだけでバタバタ倒せてます(笑)

 弱点が右胸だと分かったとしても、そんな精度で当てられるわけがないし、そもそも急所を撃たれなければ死なない体なら、あの全身装甲は不要だし、むしろ弱点の右胸だけは、簡単に撃ち抜かれないプロテクターでもつけるでしょ。

 結局は、序盤に出てきた「なかなか死なない設定」自体が不要というか、逆にマイナスだったと思う。
 「宇宙人といっても未知なだけで結局は生物だ。弾を当てれば倒せる!」としたほうが、よっぽど辻褄があったと思う。

4.アメリカ軍の攻撃手段が少なすぎ

 主人公が敵の司令部を発見し、レーザー照射してミサイルを撃って敵司令部を破壊するわけですが……

 そもそもレーザー照射って必要??

 宇宙人によるレ電波障害などで(通信できてたけど)、レーダーでの位置情報ができてなかったとしても、口頭で位置情報を伝えた上で、1発目は当たってるんだから、なんでもっとバンバンミサイル撃ち込まないの? 何の出し惜しみ? っていうか、3発目で「最期の1発」とか言ってたけど、アメリカ軍ってミサイル3発しか所有してないのか(笑)

 もっと色んな兵器あるでしょ。
 空軍が壊滅したといってるけど、そもそも何と戦って壊滅したのかわからない。
 戦闘開始時点では敵に航空兵器はないという状況で、奪還計画を開始した1〜2時間後にはじめて敵の航空兵器が登場したわけだが、そこからたった1時間程度で壊滅? それも、あんなノロノロ飛んでる無人戦闘機相手に、音速で飛ぶジェット機が??

 もっとも、宇宙から攻めてくるようなら、地球のジェット機より強力な航空兵器があって当然だけど、映画内ではその描写が全くなく、描写されてるのは、地上兵が手持ちの爆弾で爆破できる程度の無人戦闘機。

 だいいち、あんなでっかい司令部、電波に頼らなくても、空から降りてきて地中に埋まるところなんて目視でも確認できるでしょ。
 その時点でミサイルの集中攻撃かけると思うんだけど。

5.メシを食え

 映画のラスト、基地についた主人公と仲間に対して、基地司令(?)が食事をとることを勧めると、それを断り、休むことなく次の戦地へと向かっていく主人公たち……

 わき目もふらず任務に向かっていく兵士達を表現したかったんんだろうけど……メシは食べろよ!!
 腹が減っては戦はできぬ、ですよ。
 体力が求められる兵士にとっては食事だって仕事の一つ。あの表現はおかしい。
 メシも食わずに戦う兵士に、逆にリアリティが下がってしまった……

 とまあ、色々突っ込みましたが、どれもこれも、シナリオ次第でもっと良くできた内容だと思うので、だから「残念」なのです。

 ハイテクノロジーな宇宙人相手に、地球の軍隊が現代の武装で戦うという設定自体は、やりようによってはすごく面白くなると思うんですよね。

 宇宙間航行ができるといっても、兵器まで超兵器かどうかは分かりません。
 宇宙を飛べる機体であっても、ミサイルで破壊できたっておかしくないし、宇宙人も同じ生物なら、銃弾を受ければ死んだっておかしくないし、動き回れるためのやわらかい素材なら、弾丸で突き破れても設定としてはおかしくない。
 ベトナム戦争でアメリカ軍がゲリラ戦で負けたように、装備が劣る側が勝つこと自体は、あり得ない話ではない。

 でも、殺戮しか目的にしてないなら、装備が違えば勝ち目はない。
 だから1で書いたように、宇宙人が地球人に全く興味がない設定は、この逆転劇を表現すのに特に無理のある設定だったと思う。

 なので、あんな非効率なゲリラ戦を互いにやってる意味が分かりませんでしたし、「地球の兵器が通用する」という設定であればこそ、現在の軍隊の最大戦力を表現してぶつかりあったほうが、もっと説得力のある作品になったでしょうね。

 たとえば、宇宙人が地球人自体には興味がなくとも、地球の建物や施設などは極力破壊しないよう戦い、地球人は一方的に殺されるか、捕らえられるかで、あくまで人類の排除だけを狙ってるような設定にするとかね。

 てなわけで、面白い要素を多分に含みながらも、微妙に残念な映画でした。

 

 


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